鍼治療は、アロマターゼ阻害薬の関節痛を楽にしてくれるかもしれない

閉経後乳がんで、よく使用されるホルモン療法薬にアロマターゼ阻害薬がある。

効果としてはお墨付きだが、副作用の一つに関節痛というのがある。

関節軟骨にもエストロゲン受容体がでており、アロマターゼ阻害薬を使用することによって、結果として関節の潤滑油が少なってしまったり、炎症を引き起こしたりすることで関節痛がでると言われている。

通常、術後治療としての内服では、5年から10年と長期にわたるので、これも重要な問題になる。

さらには、この関節痛を理由に薬を休みがちになってしまったりすることもあり、米国の報告では、実に20%の人が関節痛を理由に内服をやめてしまうという。これは乳がん再発予防という観点からも嬉しい話ではない。

アロマターゼ阻害薬による関節痛は、比較的よくみられる副作用だが、意外と症状の緩和には苦労することがある。

内服薬では、デュロキセチン(サインバルタ)が、この関節痛を和らげるという報告が最近話題になった(J Clin Oncol 2018:1;36(4):326-332)。

 

そこで今回紹介したいのは、鍼治療がアロマターゼ阻害薬の関節痛を緩和するという一流雑誌JAMAに掲載された報告だ。

SWOGという臨床試験グループがデザインしており、この類の研究では貴重な前向きのランダム化比較試験だ。

被検者は、"本物の鍼治療"と"偽の鍼治療"と"無治療"で分けられて研究が行われた。

この鍼治療は、2人のトレーニングされた鍼灸師によって行われている。偽の鍼治療は、あえて浅く刺したり、ポイントをずらして施術することによって行われたユニークな試験デザイン。

 

結果は、

"本物の鍼治療" > "偽の鍼治療" > "無治療"

の順に6週間~12週間後の関節痛が軽減された。

(厳密に言うとprimary endpointはmetしていない)

 

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ただ、同時に行われたアンケートによると

"本物の鍼治療"を受けた68%の人は、自分が受けている治療は"本物の鍼治療"だと思っており、と"偽の鍼治療"を受けた62%は自分が受けている治療は"偽の鍼治療"だと思っていたという面白い結果もでている。

あまり鍼治療に関しては詳しくないが、微妙な違いも受ける人によっては見抜くことができるようだ。

実際、痛みに関しては、プラセボ効果が強く働くことも多く、この違いが結果に影響する可能性は大いにある(筆者らは関係ないと主張しているが・・)。

時には、"効く"と信じることで、痛みが和らぐこともあるのは事実。

今回の報告で、鍼治療が非常に有効だ、とまでは言うことはできないかもしれないが、治療を行わなかった人よりは症状改善が得られている。

これは、本当に鍼治療の効果なのかもしれないが、"何か関節痛に対して治療をしてもらっている"という気持ちだったり、実際にその過程で辛い気持ちを医療者に吐露する機会があったことが、今回の結果に影響しているかもしれない、なんて個人的には思ったりもする。

痛みの評価に関する研究は難しい・・・。

参考文献:JAMA. 2018 10;320(2):167-176