地中海料理が乳がんを防ぐ、と言うわけではないけれど

腸内細菌叢のように、乳腺の中にも細菌叢が存在しており、これが食事の影響を受けるらしい。

今回Cell Report誌に報告されたのは、これまで、食事と乳がんに関する研究・報告は様々なされてきているが、乳腺内細菌叢から乳がん発症のメカニズムに迫れないか、という新しい視点だ。

 

正直、私自身も全く知らなかったが、以前より、乳酸桿菌(Lactobacillaceae)が存在していると乳がん発症リスクを下げる可能性があるという報告が存在していたようだ。

 

地中海料理を食べたサルは、乳酸桿菌が10倍に増えた

今回の研究は、ヒトではなく、カニクイザルを用いた研究ではあるが、西洋食を食べ続けたサルと地中海食を食べ続けたサルでは、乳腺内細菌叢が異なるのか、ということを検証したユニークな研究。

 

地中海食を食べ続けたサルの乳腺内細菌叢には、乳がんのリスク低下と関連があると言われる乳酸桿菌が、西洋食を食べていたサルと比べて10倍ほど増えていた。

実際、乳がんの発症との関連を直接調べた研究ではないため、これだけでは何か確定的なことが言えるわけではないので、要注意。

 

地中海料理を食べればよいというわけではないけど

残念ながら、今回の結果を受けて「地中海料理乳がんは防げる」というような、いかにもメディア受けしそうなことはありえない。

地中海料理をよく食べている国々でも乳がんは多くみられているし、何かを食べたらがんにならないと言ったことが通用するほど、発がんのメカニズムはそんな単純な話ではない。

ただ、今回の乳腺内微生物叢の変化という概念が、発がんのメカニズム解明だけでなく、薬剤感受性や乳がんのBiology、転移などとの関連などもわかってくると面白いかもしれない。実際、腸内細菌叢と免疫チェックポイント阻害薬の効果についての報告もなされている。

マニアックな分野だが、面白い視点で、今後の研究結果が楽しみだ。

 

参考文献:Cell Rep 2018;25:47-56.e3